どうも、とある社長です。
弁護士ドラマでは「アリー my Love」が好きです。
以下の記事によると、中小企業において相談できる弁護士がいる割合はたったの38%(総数3822社中)とのことです。
ここから更に詳細なデータを見ていくと、売上高が1億円未満の会社にいたっては相談できる弁護士がいる割合はたったの20%(総数819社中)です。
反対に、売上高が30億円超の会社になると相談できる弁護士がいる割合は80%(総数265社中)へと上昇します。
感覚的にも大きな会社になるほど顧問弁護士がいる割合が増えることに違和感はありませんが、小規模な会社で顧問弁護士がいない割合がこんなにも高いことは意外でした。
僕は会社設立前から顧問弁護士に相談しましたので、どうやって自力で法的な疑問点を解決しているのか、仮にネット検索等であたりがついたとして、それで不安はないのかと不思議に思います。
さて今回の記事ではそんな顧問弁護士について、起業時から顧問弁護士がいるメリットや費用、選び方や何を相談するのか、などの点を実体験を交えて説明します。
これから起業を考える方、顧問弁護士と契約するかどうか悩ましい方のご参考になれば幸いです。
顧問弁護士のメリット
まず顧問弁護士のメリットとしては、起業時の右も左も分からない状態の中で、ざっくばらんに色々な相談ができる点です。
スタートアップや中小企業の事情に詳しい弁護士だと、法的な悩み以外にも、まだ会社が小さい時によくある悩みや論点などをよく知っているため、有用なアドバイスをくれたり、話すだけでも不安が和らぎます。
後述しますが、僕も会社設立の段階から色々疑問が生じていたので、先んじて相談し法的なリスクを潰すことができ大変助かりました。
許認可に関わることだったので、後々に問題が発覚し大事になる前に予防ができたことは良かったです。また、法的リスクにキッチリ対応している会社からは取引してもらえないリスクもありましたので、いかに法的なリスクに対応することが重要かが分かります。
無事に会社を設立した後も法的なサポートは必要です。
具体的には自社の契約書ひな形の作成が挙げられます。今回の記事の本筋ではありませんが、自社の契約書を作成しておくメリットは以下のとおりです。
- 自社のビジネスの実態を踏まえた法的安定性の高い契約書を作成可能
- 毎回同じひな形をベースに相手方と契約書交渉をするため効率的
- 契約交渉はファーストドラフトを提示した側が有利に進められる
- 顧問弁護士が実務を踏まえてひな形を作成するため、相手方からの修正案にもスムーズかつ的確に対応可能
なおはじめからある程度規模のある会社の場合、社内規定や労務周りの各種論点も対応しておく必要があります。
そしていざ会社運営がスタートしても、取引先や従業員とのトラブルはつきものです。
顧問弁護士がいれば、日常的なコミュニケーションを通じて経営者の気づかない法的なリスクを早期に識別することも可能になりますし、具体的にトラブルが起きてしまった際にも、これまでの経緯や背景を踏まえた的確な対応がスピーディーにできます。
もし顧問弁護士がいない場合、トラブルの際に一から弁護士を探さないといけないですし、苦労して弁護士を見つけても会社のことを一から説明する必要があり、いち早く対処が必要な場面ではどうしても後手に回ってしまいます。
一方で、顧問弁護士と長期的な関係を築くことにより、自社や経営者の理解も非常に深くなり、過去の経緯や背景を踏まえた適切なアドバイスを受けることが可能になります。
最後に、中小企業、特に零細企業は一般的に信用度が低く、取引をためらう会社もいますが、顧問弁護士がいることにより信用度は格段に高くなると思います。
これらの点について表形式でまとめると以下のとおりです。
顧問弁護士のメリット
- 右も左も分からない状態でざっくばらんな相談ができ、不安の多い中で良い相談相手になってもらえる
- 起業時に認識しておくべき法的な論点(特に許認可など)やその対応が相談できる
- 会社設立後に法的な問題が生じ大事になってしまうことを予防できる
- 会社設立時における法的なサポートをお願いできる(契約書ひな形作成など)
- 日ごろの会社運営の中で経営者が気づかない法的リスクを早期に識別できる
- 取引先や従業員とのトラブルに速やかに対処できる
- 顧問として長期的な関係を築くことにより、自社への理解が深まると共に過去を踏まえた適切なアドバイスを受けられる
- 顧問弁護士がいることにより対外的な信用度が高まる
顧問弁護士の費用
上記のとおり顧問弁護士の沢山のメリットを挙げましたが、しいてデメリットを挙げるとすると費用面です。
ネットでザっと検索すると、中小企業の場合の顧問弁護士費用の相場は大体月額3万円から5万円程度です。
僕も色々と各法律事務所のWebページを確認しましたが、この相場に違和感はありません。一定以上の経験や歴史のありそうな事務所は5万円が最低額の料金設定が多かったです。
確かに中小零細企業にとっては月額3万円から5万円は高額です。
しかしやはり需要あるところに供給ありということで、1万円からとか、もっと安いところだと3980円からという事務所やプランもあります。
料金の違いですが、単純にブランド料や事務所の営業戦略の違いや、5万円では5時間までの無料相談が可能だが1万円では1時間まで、といったように、何をどこまで依頼できるかなどの違いによって料金に差がありますので、内容をよく確認する必要があります。
僕も料金を最も重視しましたが、資金繰りが厳しい中小零細企業は料金の安さを重視することで良いと思います。ただし額面の比較だけでなく、何をどこまでお願いできるのかもしっかりと確認したうえで検討することが望ましいです。
顧問弁護士の選び方
次に顧問弁護士の選び方。
税理士でも医者でも、何でもそうですが、専門家といえどもあくまで人であり、能力や経験値、方針や相性は様々なので、中々どの弁護士にするか決められない、選び方が分からない、という事態に陥ることが多いです。
Webページやココナラ等のプロフィールには当然良いことばかりが書かれているので、素人からすると判断がつきにくいのは事実ですが、今回は僕の独断と偏見で一定の基準を示したいと思います。
- ① 料金
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・色々とメリットを挙げても中小零細企業にとって料金は大きな問題なので、まずは料金の水準をある程度決めておきましょう。
・先述のとおり個別具体的に確認する必要はありますが、傾向として顧問料の高さと顧問料の範囲内でお願いできる事項や時間の広さは比例するので、自分の会社がどれくらい法的なサポートを必要としそうかはポイントになります。
・会社の規模が小さく、設立間もないフェーズであれば1~2万円の水準から探すことで良いかなと思います。必要な場合は別料金を払ってサポートをお願いすれば良いだけなので。 - ② 専門領域や経験
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・当然と言えば当然なのですが、自社の業務内容に適した専門領域や経験のある弁護士を選ぶ必要があります。いくら有名でも、IT系の企業が相続問題に強い弁護士にお願いしてもミスマッチとなります。
・またWebページやプロフィールで専門領域や経験を示している場合、順番や類似性、経験年数とのバランスも考慮する必要があります。
・例えば離婚や交通事故、相続などの領域に、おまけのように企業法務が並んでいる場合などは専門性や経験が他の領域より浅い可能性があります。また経験年数が2、3年にも関わらず沢山の専門領域が記載されている場合はどれも非常に浅い経験である可能性が高い、といった具合です。 - ③ Webページやプロフィールの印象
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・今後長いお付き合いとなる可能性のある顧問弁護士は、直感的な相性も重要です。場面によっては非常に言いにくいようなことも伝えて相談する必要もありますので、何かこの人西麻布のバーばっかり行ってそうだな…という何となく受ける印象は大事にすべきです。
・また特にWebページでは事務所のカラーは出るので、そのページから受ける印象も素直に判断材料にして良いと思います。
・ブログやSNSをやっていれば必ずチェックしましょう。扱うテーマや内容で、得意領域、スタンス、人柄など多くのことが分かると思います。個人的にはきっちりと情報発信をしているだけでポイントを加算してしまいます。 - ④ 回答の的確さ、説明の分かりやすさ
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・最も大事な点ですが、相談事項に対する回答の的確さや説明の分かりやすさは必ず確認しましょう。顧問契約前でも有料の場合がほとんどですが相談可能なので、実際に相談してみることは必須です。
・Web検索などである程度事務所や弁護士を絞れたら、具体的な悩みや相談事項を整理し、相談にのってもらえるか打診してみましょう。
・オンライン対応可能か、レスポンスが速いか、日程調整がスムーズかも重要なポイントです。いくら優秀で相性が良くても、タイムリーに相談できない場合は大きなマイナス事項となります。 - ⑤ 顧問弁護士紹介サービスを利用する
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・ココナラなどを活用して自分で探しても良いですが、顧問弁護士紹介サービスを活用するのも一案です。
・メリットとしては、紹介サービスのデータベースに登録される際に一定のスクリーニングがされている、紹介サービスは各弁護士の評判を把握しているので紹介の際にも一定のスクリーニングがされていることが挙げられます。他にも、仲介者に希望内容を伝えることにより、アレンジをする手間が省けることは大きなメリットです。
・弁護士会などの公的な機関も紹介サービスをしています。未だにファックスや対面の面談が必要なデメリットはありますが、安心さを重視するのであれば検討してみてください。
東京弁護士会:弁護士紹介センター
第一東京弁護士会:専門分野の弁護士を紹介
第二東京弁護士会:顧問弁護士の紹介
※なお東京弁護士会が3つもある理由に興味がある方は以下の記事を参照ください。
弁護士ドットコム:東京の弁護士会はなぜ3つ?各弁護士会の特徴と求人との関係性を解説 - ⑥ 急成長でイケイケの事務所の留意点
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・事務所の中には急成長でイケイケの事務所もありますが、いくつか留意点があります。
・よくある点としては、拡大を優先して事務所の体制が追い付いていない場合や、そもそも顧客満足度よりも拡大を優先している場合があります。特に、そういった場合中小零細企業が優先されるケースはまずないと考えて良いと思います。
・口コミなどで、担当者がコロコロ変わる、能力が足りない、対応が悪い、といったものがある場合は避けた方が無難です。
顧問弁護士への相談内容
結論としては何でも相談可能です。専門外の場合は初期的なコメントと、適切な紹介先をアドバイスしてもらえますので、まずは気になることは遠慮せず相談してみることをオススメします。
僕の場合は、会社設立前の段階で以下のような内容で相談しました。
- 想定している事業内容を説明
- そのうちの一つの事業について許認可が必要か、考えられる対応をケース分けして相談
- 顧問契約で対応してもらえる範囲を確認
- 契約書ひな形作成の場合にかかる料金を確認
- 知財戦略の方針を相談
- その他細かい点の相談
結果として、雑談も弾み、非常に満足できたのでその場で顧問契約の締結をお願いしました。事業に関する意見ももらうことができたので良かったです。
まとめ
冒頭で紹介したとおり、中小零細企業では顧問弁護士がいる割合が低いですが、法的な問題は健康問題と同様にこじれてからだと手遅れになる場合も多いので、予防・早期発見を心がけることが重要です。
資金繰りの悪化など万が一の場合は顧問契約を解除することも可能なので、会社設立時から顧問弁護士に相談し、スムーズな会社運営を早期に達成できる仕組みづくりをすることがオススメです。
起業時には他にも色々とやることがあり時間がないのは事実ですが、起業家の方や経営者の方、これから起業を考えている方には、顧問弁護士との契約を一度きちんと検討いただくことが望ましいです。